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* category: Vintage-Audio (時代を超えた名品)

TA-E86 バーンイン完了 

DSC00451.jpg
今回はケミコン交換が主体のリペアであったが,コンデンサーは10時間の通電で90%,100時間の通電で,ほぼ設計の値が発揮されるという.作業が終えたSONY TA-E86は”バーンインなう”いうことで,ドーンと机を占領している.音はどこまで変わっているのか,パワーアンプが出来上がるまで待ちきれない.ガサゴソとジャンク箱をあさり,JFETをパラッた簡単かつ無色透明な音質のバッファアンプ(ボリュームレス)を介しヘッドホンで仕上がりの音を聴いてみることにした.

schematic diagram of the SONY TA-E86
その前にTA-E86の増幅回路を紹介.現代のデジタルソースを電圧増幅するフラットアンプ回路の設計はこんな感じのようだ.ICチップ一つでアンプが作れる今,オーディオマニアは(自分も含め),ディスクリートに回帰する傾向にあるが,30数年経過しても回路は意外に進化していないモンだと思ってしまう.

初段差動増幅回路のFETはSONYのデュアルFET・2SK58.アキバでは時々500円程度で見かけるICのような石だ.ちなみにイコライザーに使われているデュアルFETは,その上位にあたる2SK97だった.こちらは今やコレクター級の石で2000円弱もする.当時は音楽ソースといえばレコード.売れ行きを左右するオーディオ評論家のあーだこーだの対策を考えると入り口におカネをかけるのは大事で,メーカーとしては適切な投資判断だと思う.ほか定電流源のFETはSONYの2SK23Aと東芝2SK30.

終段のエミッタフォロワはSONYの2SC1811/2SA896.つまり入口と出口のトランジスタはSONYで固められていることで,SONYの威信をかけた製品であることがヒシヒシと伝わってくる.ただ,二段目の差動増幅回路やカレントミラー回路に使われているのは日立製トランジスタ.C458,A893,A844,C1890といったところ.トランジスタを世に送り出したのはSONYだが,さすがにオール自社とはいかなかったようだ.多分,いろいろ葛藤があったんだろう.
余談になるが,TA-E86の上位機種E88に比べると温度ドリフトに強いメタキャンのトランジスタは一切使われていない.また,高精度抵抗も信号系だけの実装になっている.

で,最後にインプレ.
ケミコン類交換で銘器復活!を強く印象づける濃厚な音.アンプ到着したとき聴いた音は妙に中域に偏ったカマボコ型の印象だったのが豹変している.低音域は量感あふれながらも締まりがある,中高域の伸びが加わり正に高級アンプにふさわしい厚みたっぷり.「濃いなぁー」そんなアンプだと思う.
参考まで,当時のオーディオ評論家はこんなインプレだったようだ.
「音のバランスという面では音域内での過不足もことさら指摘しにくいし、質感も滑らかで耳ざわりの悪い音を鳴らさない。ウォームな音の中にも現代的な反応の鋭さもある。ただ、アメリンクの独唱で、声自体がやや張り出す反面、伴奏のピアノはむしろ音像がことさら後に引いて、タッチも暗い感じがするというように、コントラストが強く聴こえた。また、「SIDE BY SIDE3」のベーゼンドルファーの音の丸みと艶が不十分で、打音がどこか輪郭だけのように聴こえる。MCヘッドアンプの音は、MC20に対しては切れ込みは良くなるが素気なくなる傾向。DL103Sでは解像力はトランスより良くなるが骨ばる傾向で、どちらかといえば乾いた音と聴きとれた。 」



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